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スペースその13 | ウサネコ王国のミャーポン
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ウサネコ王国のミャーポン
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その13 いよいよ冒険に出発!
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「では早速、タカシさんとミャーポン、サキの三人で行ってくれんかね?ユウジくんにはこっちのことを手伝ってもらうから。」
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 ミハエルさんにそう言われると、タカシはブルブルっと武者震いをしました。自分でも驚くくらい緊張しています。今までは、魔術師なんてゲームの世界だけの存在だったのが、今からそれに会いに行くのですから。サキはミハエルさんから地図を受け取りました。
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「いってきまーす。」
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 ユウジとミハエルさんを残し、三人は川岸を東へ歩き出しました。川の下流がちょうど真東にあたります。タカシはそれでも少し拍子抜けしていました。普段やっているロールプレイングゲームの様に敵と戦ったり、姫を救出したり、レベルアップしたりと、そういった冒険を想像していたからです。反面、それほど危険が無いことにホッとしましたが、姫の呪いを解くこと自体に疑問がありましたし、魔術師と会った先の話が全く見えてこないことと、もし会えなかったらどうなるんだろうと、ゲームの冒険とは違いストーリーの展開が、一筋縄では行かないことに不安を感じていました。
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「ここからどれくらい?ミャーポン以外全員行ったってことは、サキちゃんは行ったことあるんだよね、魔術師のところ。」
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 かわいいピンクのリュックを背負ったサキは歩くのをやめず、地図を見ながらタカシに答えました。
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「うん。でもみんなで行ったからね。大勢で行って、一人一人順番に呼び鈴を押したの。」
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『それって、嫌がらせに近いな…。』と、タカシは思いましたが口には出しませんでした。ふとミャーポンを見ると、スキップでもしそうなくらい上機嫌な笑顔です。最終兵器と言われたことが余程嬉しかったのでしょう。
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「えっと、この右側の森が終わると、川が斜め左方向に曲がるからまっすぐ東に草原を進んで、ジルダの街にとりあえず行きましょう。ちょうどその頃お昼になると思う。」
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「えーっ!お昼でまだ途中のポイントなの?魔術師の家までどれくらい時間かかるの?」
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 タカシは少し弱気です。
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「お前なぁ。旅だぞ旅。最初から行っただろう。それに、今そこに魔術師の家があっても嫌だろう。心の準備しておけよ。」
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 ミャーポンは得意気です。でもそんなミャーポンもちょっと不安だったりします。魔術師は出てくるのだろうか、出てきたら出てきたでどう話して良いのやら…。反面、サキは一度行ったことがあるので、そうでもないようです。
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「魔術師の家に着くのは夕方くらいだよ。」
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「じゃぁ今晩はどこかに泊まるの?」
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「うん。魔術師の家の近くに小屋があるからね。そこに泊まるよ。あ、でも魔術師に会うことができたら、タカシくんとミャーポンは魔術師の家に泊めてもらえばいいんじゃない?」
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 サキは前回、魔術師に会えなかったので、今回も自分にとっては他人事なのです。
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「大丈夫、大丈夫。泊めてもらうときは、サキも仲間だから一緒に、って俺がお願いしてやっから。」
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「いい、いい、いい。遠慮します。」
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 ミャーポンの言葉にサキは即座に反応しました。その嫌がりぶりは見事でした。
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「ねぇ。こういうところでいきなり襲われたりとかしないの。○○が現れた。とかって。」
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  念のためタカシは聞いてみました。
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「だってここ、ウサネコ王国の中だぜ。人間社会じゃあるまいし、同じ国に住むもの同士で襲ったり襲われたりなんてしないよ。」
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 ミャーポンの言っていることは正しいのですが、タカシはどこか腑に落ちません。しかし、よく考えると確かに人間は、同じ人間同士、国に住むもの同士でケンカをしたり、時には殺したりもします。ここで冒険するよりも、普段の生活の方が危険なのかもしれない、ともタカシは思いました。
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 タカシたちの身長の、半分くらいの高さまで草が茂る草原が続きます。ただ、道の部分は草が踏み固めてありました。草の上を渡る風は心地よく、タカシの鼻をくすぐります。日は高く昇りましたが照りつけることは無く、ぽかぽかといい日和です。
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「何かお話しましょうか、タカシくんって人間だったとき、どんな顔だったの?」
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「え?」
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 タカシは思わず言葉が出ませんでした。自分の顔を説明するというのはとても難しいものです。しかも、住んでいる世界が違うので有名人に例えるわけにもいきません。
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「山本さんみたいな感じだよ。」
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「あー、なるほどね。」
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 ミャーポンとサキの間では解決したようですが、『山本さん』が誰なのか、タカシにはサッパリわかりません。しかし、言いようが無いのでそのまま流そうと思いました。すると、サキがこう言いました。
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「意外と年なんだね。じゃぁ、タカシさん、いや、タカシおじさんって呼んだ方がいいのかな?」
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「おい。」
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 タカシはミャーポンの腰にチョップをくらわしました。
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「冗談だよ、冗談。山本さんってのは、サキの妹の飼い主なんだ。」
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「妹さんは人間界にいるんだ。」
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「そうだよ。時々会ってるからいろいろ知ってるよ。」
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 すると、地平線の彼方に街が見えてきました。どうやらそこがジルダの街のようです。
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「ジルダには私のお兄さんがいるの。だからそこでお昼ご飯を食べましょう。」
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「お兄さんも料理屋さんやってるんだ。」
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「うん。兄は人間界料理との調和を目指してるシェフだから、タカシくんの口に合うといいな。」
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 『シェフ』という言葉に、『これは美味しいものが食べられるかも…。』とタカシの期待は高まりました。果たして…。
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