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スペースその5 | ウサネコ王国のミャーポン
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ウサネコ王国のミャーポン
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その5 ミャーポンとワープ
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 タカシとミャーポンは、ワープゾーンである池に飛び込み、暗闇の中を漂っていました。
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「果たして、ウサネコ王国とはどんなところなのか、姫とは、そして呪いとは…。タカシは姫にかかってしまった呪いを解くことができるのだろうか。」
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 ミャーポンがひとりで喋っていました。タカシはIDカードをくわえていたので喋れれませんでしたが、心の中で呟きました。
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『何言ってるんだ?ミャーポンは。なんか他人事みたいな言い方だなぁ。』
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「タカシの気分を盛り上げようとしてるんだよ。」
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 言葉を返すようにミャーポンが言いました。あまりのタイミングの良さにびっくりしたタカシは、こう心の中で呟いてみました。
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『心読まれてるのかな。』
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 しかし、ミャーポンは何も答えませんでした。
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『偶然かな…。』
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 そうこうしているうちに、ずぶ濡れになったタカシの服がどんどん乾いていきます。そして次第に前方が明るくなってきました。
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「さぁ、もう着くぞ。ウサネコ王国だ。」
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『まぶしいー。』
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 タカシは、うつ伏せになって気を失っていました。ハッと気がつくと、目の前には田舎の風景が広がっていました。田んぼや畑があり、周囲は山に囲まれています。正面の家では水車が回っています。タカシは、もっと不思議などちらかというと宇宙空間のようなイメージを抱いていたので、日本の田舎に似たその風景に『本当にここがウサネコ王国なのか?』という疑問を抱きました。
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「お、やっと気がついたか。」
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 立ち上がりながら声の方を見ると、ミャーポンが二本足で立っていました。タカシは驚きましたが、それよりももっと違和感があるところがあります。タカシは目を疑いました。
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「ミャーポン、立てるの?あれ?ミャーポン大きくない?」
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 なんと、立ち上がったタカシと、立っているミャーポンの目線の高さが一緒なのです。
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「タカシ、びっくりするなよ。ほら!」
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 そう言うと、ミャーポンは後ろに回していた前足、いや、両手で鏡をサッと差し出しタカシに向けました。すると、そこに映っていたのは人間のタカシではなく、一匹の二本足で立った猫になったタカシの姿だったのです。
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 さすがのタカシも、これには驚いて声も出ませんでした。
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「びっくりしたかー。タカシには猫になってもらったぞ。この世界には、人間は基本的に来ることができないんだ。いろいろあってね。そこで、タカシにはネコの姿になってもらって、一緒に旅をしてもらおうってわけなんだ。」
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「俺がネコに…?おいおい、これちゃんと元の姿に戻れるんだよね?」
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 そう言いながら、タカシは両手や耳を動かしています。自分の意思でちゃんと動くかどうか、確かめているようです。
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「あぁ、戻れるよ。姫の呪いを解けばね…。」
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 ミャーポンがニヤリと笑みを浮かべながら言いました。
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「そういうことか、そういうことか!無事に戻れるかどうか保証が無いってのは、そういうことか!姫の呪いを解くことができなかったら、元の世界に戻れたとしても、ネコの姿だから無事じゃないってことか。あーだまされたー。」
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タカシは頭を抱えながらしゃがみこみました。するとミャーポンはちょっと不機嫌そうに言いました。
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「ちょっと待ってよ、騙したつもりなんて無いよ。」
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「じゃぁどういうことだよ、ネコに変身しちゃうなんて、言わなかったじゃないか!」
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「全く、人聞きの悪いこと言うなよ。そうだよ、言わなかっただけだよ。じゃぁもうひとつ、はっきり言っておくよ、タカシの考えには間違いがある。」
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「なんだよ。」
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「姫の呪いが解けなかった場合は、人間の姿に戻れないだけじゃなくて、一生ウサネコ王国で暮らしてもらうことになる。」
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 タカシは愕然として言葉がでませんでした。あるのか無いのかよくわからない肩をガクっと落としました。しかし、なぜか笑いが込み上げてきました。
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「はは、ははは、ははははは。」
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「タカシ、どうしたんだ?急に笑いだして。」
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「要は、かわいいお姫さまの呪いを解けば全て解決するんだろ?やってやろうじゃないの。乗りかかった船だ。ミャーポン、頑張ろうな。」
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 そう言うとタカシは、同じくらいの身長になったミャーポンと肩を組みました。どうやらタカシは開き直って何もかもが吹っ切れたようです。
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「お、おお!」
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 ミャーポンは、タカシの開き直りにちょっと戸惑いながらも、ふたりは固い握手をしました。
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「じゃぁ、さっそくそのカワイイ姫さまに合わせてもらおうじゃないの。これでカワイくなかったら、おまえのことサギ師って呼ぶからな。」
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「タカシ、そこはまかせとけって。姫は本当にタカシのタイプだって。保証する。でも姫に会う前に、話しておかなきゃいけないこともあるし、ちょっとそこの喫茶店で休憩しようか。」
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 ミャーポンが指さした方角は、さきほどの水車の回っている家とは反対方向で、そこにはお店が一軒ありました。『あれ?こんな店テレビで見たことがあるぞ?』タカシはその記憶を辿りました。
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「ミャーポン、あれ喫茶店?お団子やさんじゃないの?」
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 そうです。そこには時代劇などでよく見る、赤い暖簾と旗を掲げたお団子やさんがありました。
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「何言ってるんだよ、喫茶店だよ喫茶店。まぁ、団子もあるけどな。ここのマタタビジュース最高なんだよ。」
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『僕が飲めるものあるかな…。』
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 タカシは心の中でつぶやきました。
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