


その7 歓迎!ウサネコ王国


ミャーポン、タカシ、ユウジ、サキの、ネコふたりウサギふたりは、田んぼや畑の間を、お城に向かって小走りしていました。あたりの風景はのどかで、空が少しずつ赤みを増し、夕暮れが近づくなか、「カァー」とカラスの鳴き声が響いていました。

『お城ってどんなところかなぁ。やっぱりこの雰囲気だと天守閣があって、周りがお堀になってたりするのかな。ってことは姫は着物姿?それもいいなぁ。』

タカシはニッコリ笑う、初恋の裕美ちゃんの着物姿を想像していました。思わず笑みがこぼれます。するとミャーポンがすかさずツッコミます。

「おい、タカシ。お前何ニヤニヤしてるんだよ。気持ち悪いな。」

「え?いや、姫さまはどんなかなーと思ってね。」

ちょっと照れた様に頭をかきながら答えると、サキがこう言いました。

「そうだねぇ。確かに姫さまはカワイイよね。でも私だって負けないよ。」

この時、タカシの脳裏にこんな衝撃が走りました。

『そういえば、姫さまはウサネコ王国の姫さま…ってことは、ネコ…それかウサギ…そうじゃん。何で俺カワイイ人間の女の子だとばかり思ってたんだろう。そうだ、ミャーポンがカワイイとか、俺のタイプとか言うから、てっきりそう思っちゃってたんだ。ガーン。』

タカシは脳裏によぎったそのことのせいで、すっかり肩を落とし、暗い表情に変わってしまいました。その様子を見ていたミャーポンが、心配になって声をかけました。

「タカシ、今度は暗くなっちゃって、どうしたんだ?おじけづいたのか?」

タカシは無言のままです。

「ニヤニヤしたり、暗くなったり忙しいヤツだなぁ。あ、ほら見えてきたぞお城。」

すっかり元気の無くなったタカシは、ミャーポンの指差すほうを見てまたまたビックリしました。そこには、周りの風景とは全然似合わない、西洋風のお城が建っていました。3つの三角屋根の塔があり、左右の塔のてっぺんには、それぞれウサギとネコの絵の旗がはためいていました。真ん中の一番大きな塔には、円のなかに様々な線や図形が描かれた模様のある旗がありました。ウサネコ王国の国旗のようです。そして、お城の門の向こうにはたくさんのウサギとネコが集まっていて、パーティの準備が進められている様子が見えました。もちろんみんな二本足で立っています。

『ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン。』

お城の鐘が5つ鳴りました。どうやら5時のようです。

「ふぅー間に合ったー。危ない危ない。」

ミャーポンたちは、鐘が鳴り終わるとほぼ同時に大きなお城の入口の門をくぐり抜けました。高さ2メートルくらいはある入口です。ミャーポンがほっとしながら汗を手でぬぐっていると、お城の方から白い髭を生やしたネコが走ってきました。

「よっ!ジジィ。」

ミャーポンはそのネコにこう声を掛けると、その白い髭のネコは焦った表情でミャーポンに言いました。

「ミャーポン、まったく心配させおって。間に合わなかったらどうしようかと思ったぞ。到着するまで、ワシが宴をトークでつながなきゃいけないかとヒヤヒヤしたぞ。」

「何でトークで繋ぐんだよ。電車が遅れてますとか、適当にごまかせばいいじゃんか。」

ミャーポンは斜に構え、ニヤッと笑みをこぼしました。

「ワシは、こういうセレモニーで無言になるのはイヤなんじゃ!だいたい電車なんてものはこの国には無かろう!あ…。」

白い髭のネコは、タカシ達に気がつくとタカシに話しかけました。

「これはこれは失礼しました。私はミハエルと申します。城内の管理と、姫の教育係をしております。あなたがタカシさんですね。どうぞ今回の一件、よろしくお願いしますぞ。」

そう言うと、ミハエルは一礼し4人を誘導しました。

「では、こちらにお座り下さい。向かって左から、ミャーポン、タカシさん、ユウジさん、サキさんの順にお座り下さい。」

テーブルの上には、料理が並べられていました。そしてテーブルの反対側にも、たくさんのテーブルが並んでいて、ウサギやネコたちがずらっと座っていました。

『宴って、豪華な料理って、カツオ節と味噌汁ご飯と野菜スティックじゃないか。あれ?でも、おいしそうだなぁ。あーよだれが出そうだ。』

タカシがそんなことを考えていると、右側のステージ上にミハエルさんが現れました。そしてマイクの前に立ち話し出しました。

「それでは、ただいまから歓迎の宴をはじめます。今日、ウサネコ王国に初めてやってきた、タカシさんと、一週間ほど前から滞在しているユウジさんです。それではお二人こちらにどうぞ。」

そう言うと、会場は大きな拍手に包まれました。と言っても肉球と肉球の拍手なので『ポン、ポン』という音でした。二人はステージ上に上がりました。

「それでは、王様、王女様、姫さま、こちらにいらっしゃってください。」

すると、ステージの上手から、立派な髭の黄金色をしたネコと、綺麗なドレスを着た白いウサギがやってきました。すると、黄金色のネコが話し出しました。

「ようこそ、タカシさん、ユウジさん。私がウサネコ王国の初代国王、タマです。」

『タ、タマ!?オスネコであの風格、さらには王様なのに、タマ!?』

タカシは笑いをこらえるのに必死です。

「私が王女のマーガレットです。」

『王女さまは普通だな。あれ?姫さまはどこだ?ウサギとネコの混血ってことか?』

タカシがキョロキョロ姫を探していると、王様もそれに気づいたようです。

「あれ、姫はどこ行ったんだ。」

「さっきまでそこに居たんですよ。あら?」

王様が裏へ姫を探しに行きました。タカシとミャーポンも立ち上がり覗いていると、元気のいい女の子の声が聞こえてきました。

「嫌だって言ってるでしょ!この姿で人前に出たくないの!あの服持ってきてよ。」

そのとき、タカシは目を疑いました。ちらっと見えた腕が人間だったのです。

|
  

|
|